製造業にクリエイティブを。
社外取締役が加速させる
中央化工機の「人づくり」。

1950年(昭和25年)創立の中央化工機株式会社は、愛知県豊明市に本社を構える粉体装置及び化学機器メーカーです。振動ミルと振動乾燥機において国内トップシェアを誇り、開発・設計から組立・メンテナンスまでを一貫して自社で手がけています。
LENS ASSOCIATES(以下 LENS)との付き合いは約10年。展示会用の映像制作やウェブサイトリニューアルに始まり、コーポレートロゴ、製品紹介動画、ユニフォーム、新社屋の内装デザイン、そしてインナーブランディングへと、その領域は広がり続けてきました。そして2024年、LENS代表の矢野まさつぐが、中央化工機の社外取締役に就任。製造メーカーがクリエイティブディレクターを取締役に迎え入れるという、かなり珍しい決断の背景と成果を語ります。
インナーブランディングとクリエイティブについて振り返った記事もご覧ください。
https://www.lens-associates.jp/customer_reviews/chuokakohki/

会社に新しい風を入れるため、違う業界の人を迎えたかった
矢野:せっかくの機会なのでずっと聞きたかったことをまずはうかがいたいのですが、社外取締役に僕を推薦してくださった理由ってなんだったんでしょうか。
加藤さま(以下 加藤):矢野さんとは展示会用の映像制作をきっかけにお会いして、そこから、ウエェブサイトリニューアル、インナーブランディングやその他のクリエイティブも含めてLENSさんにお願いし始めてからかなりの年月が経ちました。
【参考記事】https://www.lens-associates.jp/customer_reviews/chuokakohki/
実は以前より自社に対して「同じ業界の人間だけで固まりすぎているのでは」という不安があり、いつか全然違う業界の人を社外取締役に迎え入れたいと考えていました。LENSさんと一緒に手掛けたさまざまなプロジェクトを通じて改めてその思いが再熱し、満を持して矢野さんに依頼したという経緯です。
それと、矢野さんって笑い方がいいんですよね。僕はずっと「笑うことで福が来る」と信じているんですけど、役員会はどうしても重い話が続くから、矢野さんがワーッと笑ってくれると場が明るくなる。それも、お誘いした理由のひとつですね。
近藤さま(以下 近藤):ブランディングのプロジェクトを通じて矢野さんと接していたので、加藤社長から「矢野さんを社外取締役に迎えたいと思っているがどうか」と相談を受けたときには「新しい風が入るし、おもしろいんじゃないか」とすんなり受け止められました。実際、すぐに会社になじんでくれましたしね。
矢野:まさか笑い方も評価のひとつだったとは(笑)。自分に求められているのは「外側の視点による新しい提案」だろうとは思っていたので、就任した日の役員会でさっそくやりたいことを2つ提案したことを覚えています。
ひとつはバースデーランチ。100人以上の社員がいて、年齢も性別も国籍もバラバラなので、その月に誕生日を迎えた人だけを部署横断で集めて僕と一緒にお弁当を食べるという企画です。もうひとつはビジネスプランコンテスト、いわゆる新規事業コンテストですね。どちらもその場で加藤さんが「いいよ、やって」と即断してくれました。
バースデーランチを実施する表向きの理由としては「僕がみんなの顔と名前を12ヶ月かけて覚えること」を掲げていましたが、本当に実現したかったのは、部署や役職を超えた会話の場をつくることでした。いろんな人がいろんな話をしてくれたおかげで僕自身も中央化工機への理解度が深まりましたし、改めて「従業員から愛されている会社だなあ」と感じられたのもすごくよかったです。


インナーブランディングを、会社の仕組みに変える
矢野:前回のカスタマーレビューでも触れていただいたインナーブランディングのワークショップは、当初LENSとしてお手伝いしていたものです。全社を7つのグループに分けて毎月2時間ずつ会議をしていましたが、社外取締役に就任したことを機に、これを会社としての取り組みに昇華させたいと考え、定例会議として提案させていただきました。
近藤:最初のワークショップの成果としては、部署を横断して濃いコミュニケーションをとれたことが一番大きかったと感じています。製造と営業、という部署の違いはもちろんのこと、製造部同士でも、違う部門の手順や機械を知らないこともあります。互いについて知ることで、「会社として成長するためには何が必要なのか」という意識が自然と育まれていった印象がありました。営業が「お客さまにここまで期待してもらっている」と話したあとに、すぐさま製造が「それに恥じないクオリティのものをつくらないと」と返す場面もあって、インナーブランディングの意義を感じられる瞬間がたくさんありました。
矢野:手応えがあったからこそ、次のステップが必要だと考えました。外部のパートナーが主導するワークショップのままだと、どうしても「やってもらっている」という受け身の構図が残ってしまいますので、テーマ別の委員会をいくつか立ち上げて、社員が自主的に活動する形に移行。名前も「インナーブランディングプロジェクト」から「みんなのブランディング会議」に変更しました。
水野さま(以下 水野):以前よりインナーブランディングのプロジェクトには参加していましたが、名前が柔らかくなったことで、周囲を誘いやすくなった気がします。
矢野:社外取締役就任以降の話題で言うと、中学校との取り組みも印象に残っています。「外部講師としてブランディングの授業をお願いしたい」という依頼に対して、中央化工機をテーマに話をさせていただきました。前半ではクリエイティブディレクターとしてブランディングについての講義をおこない、後半は中央化工機の社外取締役として「会社のロゴやキャラクターを考えてほしい」という実践型授業をおこないました。できあがった案を全社員に見てもらい、もらったフィードバックを中学生たちにも伝えたところ、すごく喜ばれて。外との接点をつくることはブランディングにおいて重要な要素ですし、自分の仕事が中央化工機のブランディングにもつながっていくことがとてもうれしいですね。
昨年は食堂もリニューアルしたのですが、リニューアルにあたっては名前を全社公募にしました。空間のディレクション自体はLENSとして手がけていましたが、社員全員を巻き込む仕掛けとして名前はみんなで決めたかったんです。「食堂」のままだとどこまでいっても食堂でしかないけれど、みんなで選んだ「HIMAWARI(ひまわり)」という名前がつけば、会議にも、イベントにも、いろいろな用途で使おうという意識に変わる。LENSが作って納品するのではなく、社員自身が考えて選んで、自分たちのものにしていく。そういうプロセスを増やしていくことが、取締役としての僕の役割だと思っています。
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平安山さま(以下 平安山):中学生が考えてくれたキャラクターたちは社内でも本当に好評で、プリントアウトしてデスクマットの下に入れている社員もいるんですよ。
矢野:最高ですね!描いた子に伝えたいですね。
平安山:インナーブランディングの取り組みを始めた最初のころは、「何をやったらいいんだ」という雰囲気もありましたが、今は一人ひとりが自分ごととして取り組んでくれている。形骸化していないのは本当にすごいことだと感じます。
矢野:「みんなのブランディング会議」には僕も毎回どこかの班に入って一緒にディスカッションをするんですけど、ベテランも若手も別け隔てなく、全員が自分の意見をきちんと言ってくれる。それぞれがしっかり考え、それを伝えられる文化が醸成されていることが素晴らしいと思います。
平安山:継続できている大きな理由のひとつは、やはり矢野さんが取締役として関わり続けてくれていることだと思います。会社のことをよく知っている人が外側の視点を持って一緒に考えて、ちょっと背中を押してくれる存在がいるのはありがたいですよね。
近藤:引っ張ってくれる仲間がいるのは本当に大きいです。社内の調整役として動いてくれる社員も育ってきていますし、その人たちの熱量がまた周りに広がっていく。そういう循環が生まれています。


場所と機会によって、個人のポテンシャルが広がる
加藤:LENSさんとの取り組みを機に大きく変わった人で言えば、水野さんがいちばんじゃないですかね。
水野:私は今、執行役員として製造部全体を見ているんですけど、毎朝10分から15分、みんなの前で話をする時間を設けています。以前は班ごとにバラバラだった朝礼を製造部全員で集まる形に変えました。テーマはさまざまで、バリューに掲げている「顧客起点」について掘り下げる日もあれば、挨拶ひとつとっても「すれ違ったときに一呼吸置いて、相手の顔を見て声をかけよう」といった日常の話をすることもあります。お客様に喜んでいただくために、自分たちの製品をきちんと理解し、自分の言葉で語れる製造部でありたい。ものづくりの楽しさの本質はそこにあるんだ、ということを伝え続けています。
加藤:何年か前はこんなに喋る人じゃなかったんですよ。ものづくりに没頭するタイプだった。
水野:(笑)。正直、執行役員の話をもらったときは不安しかなかったです。自分にできるのかと。でも、やらずに安全な方へ逃げるのは違うなと思いました。ブランディングのワークショップで他部署の人たちと深く話をするなかで、会社の未来について自分ごととして考えるようになったんです。ここで働いてよかったとみんなが思える場所にしたい。いつか今の役職を降りても、同じ仲間として一緒に働いていたい。一人ひとりが持っている可能性を引き出せる環境をつくりたいと、本気で思っています。
近藤:ブランディングに取り組むようになってから、製品に対する自信やプライドは確実に高まっています。「中央化工機が好きだ」「この仕事が好きだ」とみんなが思えれば、お客様にいいものを届けようという意識にも自然とつながっていく。部署を超えたコミュニケーションが密になったことで、以前のようなミスも減りました。相手の人となりを知っている、他の部署が何をやっているかを理解している。それだけで防げるミスって、実はたくさんあるんですよね。
平安山:矢野さんからはいつもエネルギーをもらっています。圧倒されるくらいパワフルな方なんですけど、そのなかから「これはいいな」と感じたことを少しずつ自分にも取り入れるようにしていて。出会いを大切にしようとか、自分自身が楽しみながら働こうとか、そういう前向きな気持ちが強くなりました。
矢野:ありがたい言葉ですけど、僕が何かを新しく作ったというよりは、元々みなさんの中にあったものを引き出しているだけだと思うんです。バースデーランチで一人ひとりと話していても、中央化工機のことが好きな人しかいない。水野さんにしても、ポテンシャルはずっとあって、場所と機会が用意されたことで、それぞれが自分らしくやれるようになったということなんじゃないかなと思っています。

経営戦略とブランド戦略は「ニコイチ」である
加藤:業界シェアトップという実績はたしかに大きな誇りではありますが、それだけではなく、業界全体を見渡したときに「中央化工機はいい会社だよね」と言ってもらえる存在になりたいんですよね。それを実現するためにこれまでブランディングに投資してきたわけですが、ここからさらによくしていかなければならないと思っています。
矢野:加藤さんがおっしゃる「いい会社」を実現するうえでは、経営戦略とブランド戦略の両方が必要だと感じています。多くの会社にはブランド戦略が存在しなくて、経営戦略だけで回している。でもそれでは、数値目標とインセンティブでしか人を動かせないんですよね。自分たちの仕事が社会の中でどう機能していて、どんな未来を目指しているのかをストーリーとして伝えていくこと。それがブランド戦略であり、経営戦略との両輪がそろって初めて、本当の意味でエンゲージメントが上がっていくのだと思います。
米国のギャラップ社が毎年、「やりがいを持って働いている人の割合」を国別に発表しているんですけど、世界平均が23%あるなか、日本はわずか7%で世界最低水準なんです。ぼくの個人的な野望ですが、中央化工機では、この数字を40%以上にしたい。技術の知識は足りませんが、製品を作る「人」の部分をバックアップすることはできる。外から見ても中から見ても「日本を代表する製造業」だと胸を張れる組織づくりに、貢献していきたいと思っています。
加藤:これからも楽しくやっていきたいですね。こうやっていろいろ喋っていればアイデアは出てくるんで。みんなの協力あってこそですけどね。どんなにいいアイデアも、実行に結びつかなければ意味がないですから。
矢野:きっとまた新しいことが始まりますよ。そのときもまた、中央化工機らしいやり方で実現しましょう!


