会社の主語が「I」から「We」に。
「もっと笑顔。もっといい日。」
を、たくさんの人へ。

「焼きとん 大黒」「魚椿」の立ち飲み居酒屋を中心に、数多くの飲食店を展開する光フードサービス株式会社。2009年の設立以来、「ひとつでも多くの『笑顔』と『笑い声』に出会いたい。」という理念のもと、現在では61店舗を運営するまでに成長を遂げ、2024年2月には東証グロース市場及び名証ネクスト市場への上場を果たしました。

LENS ASSOCIATES(以下 LENS)と光フードサービスが出会ったのは、上場準備を開始してしばらく経った2022年のこと。企業としての発信力強化を見据え、コーポレートブランディングを考え始めたのがきっかけでした。

(左から)ブランディングディレクター  井戸田莉菜、店舗開発課 細田貴久さん、大谷光徳代表取締役社長 、店舗開発課 広報担当 平瀬葉子さん

「笑顔にしたい」とはどういうことか、を深掘ることからスタート

井戸田:ロゴ、タグライン、ステートメントのお披露目イベント、とても盛り上がったと澤田から聞きました!今日は澤田も同席予定でしたが、体調を崩してしまい直接お話伺えず残念です…。

さっそくですがまずは、今回のプロジェクトのきっかけから振り返らせてください。

細田さん(以下細田):「大黒」「魚椿」といった店舗ブランドは広く認知されている一方で、運営会社としての「光フードサービス」はあまり知られておらず、上場を目指していたこともあって、コーポレートとしてのブランドを確立する必要があるのではと感じていました。

大谷社長(以下大谷):会社そのもののブランディングが必要だと細田からは聞いていたものの、当初はその重要性をあまり認識していなかったんです。社長と言ってももともとは立ち飲み屋のオヤジからスタートした身なので(笑)、会社がどう見られているかよりも、それぞれの店舗にたくさんのファンがいてくれること、そこで働いてくれるスタッフのために売上利益を残すこと、に意識が向いていましたね。

井戸田:細田さんから相談をいただいたのはCIプロジェクトが始まる1年ほど前。まずは上場に向けた資料づくりなどのサポートをおこないながら、ブランディングプロジェクトに必要な情報や体制を整えていきました。

大谷:最初にLENSさんと取り引きがスタートしたタイミングでブランディングの話は聞いていたんですが、自分を含め他の役員たちも必要性を感じていなかったのでちょっと保留しましょう、となったんですよね。その後、いざ上場が現実的になってきたタイミングで、改めてプロジェクトをスタートさせました。

理由としては、金融機関や投資家たちと交流するなかで「業態じゃなくて会社のことが知りたいんだよね」と声をかけられることが増え、会社としてのメッセージや見られ方を発信する重要性に気づき始めたことも大きかったと思います。そうしたときにLENSさんから、多くのステークホルダーに期待してもらえるよう、光フードサービスという会社が「どういう存在」で「なにを目指してるのか」を、より明確に具現化しましょうと提案を受けて、よしやろう、と決めました。

井戸田:ロゴ、タグライン、ステートメントを含むブランディングに取り掛かるにあたり、まずはタグラインの提案をさせていただきました。…のですが、初回の提案ではあまりハマりきらなかった印象ですよね。

大谷:そうですね、最初の提案のときは「あまりしっくりこないな」というのが率直な感想でした。僕の中ではしっかり見えているんだけど、言葉になりきらない感覚がありました。

経営理念の「ひとつでも多くの『笑顔』と『笑い声』に出会いたい。」から、「笑顔」というキーワードをもとにたくさん展開してくださって、それ自体はもちろん大正解なんですけど、同時に、押し付け感みたいなものも感じてしまって。

大谷:「笑顔にしたい」にもいろいろ種類があると思うんですが、僕が描いているのは「暮らしの隙間を埋める」というような、マイナスやゼロをプラスにするニュアンスではないんです。そもそもすでに世の中の多くの人はすでに豊かであって、それをもっと豊かにできたり、人々の暮らしに彩りを添えることができたらうれしい、という感じ。普段から満ち足りている人たちが、ただ楽しいから大黒や魚椿に足を運ぶ。それでいいんです。上から目線で「笑顔をつくってやりますよ!」とは言いたくなくて、笑顔があふれるきっかけづくりを下から支えていきたいんですね。

井戸田:違和感を感じるポイントを掘り下げ、丁寧にヒアリングさせていただけたからこそ、改めてその後の提案にしっかり生かすことができたと実感しています。

大谷:僕にとっても非常にいい時間だったと思います。自分のなかにあるモノをしっかり言語化するのは難しいけれど、質問をされれば答えられる。井戸田さんやコピーライターの古屋さんにたくさん導いてもらって正解にたどり着く作業でしたね。

再度ヒアリングしてもらったのちに再提案いただきましたが、「もっと笑顔。もっといい日。」はひと目でしっくり来ました。「そもそもこの会社ってなぜ創業したんだっけ」というところまで踏み込んで考えることができたからこそ、この案に着地できたように思います。

細田:その過程を間近で見ることで、自分が思い描いていた会社のイメージとの齟齬にも気づくことができました。会社が目指す方向性を改めて再確認でき、本当によかったです。

最終的な決定は「違和感のなさ」を見極めることが重要

井戸田:ロゴマークを提案するにあたっては、まずはさまざまな方向性をざっくばらんに選んでいただくところからスタートしました。当初からスマイルロゴは有力案として挙げてはいましたが、最初から選択肢を狭めてしまうことはしたくなかったので、まったく異なるテイストの案も含めて検討しました。

細田:複数の方向性を選んだのちにご提案いただいたロゴだけでもかなりの数があったのですが、どれもクオリティが高くて驚きました。ボツにしてしまうのがもったいなくて、絞り込むのに苦労しました。

井戸田:最終的に絞り込んだ案をもとに、デザイン違いで3案を展開し、最終決定は大谷社長に選んでいただきました。

大谷:今回は、僕が何かを選ぶときによく取る手法を用いました。社長室に3つの案を並べておいて、数日いつものように過ごすんです。毎日眺めるなかでいちばんいいと思うものを残し、またいつものように過ごす。じっくり熟成させてみて、それでも違和感がなければきっとそれが正解だろうと。そうして決まったのがこの案です。

ロゴマークは「笑顔」、光フードサービスの「ひ」と「H」を表現しながら、同時にコミュニケーションを広げ、繋げていくという意味も込められている

大谷:結局のところ光フードサービスは泥臭いことをコツコツやっている会社なので、おしゃれでスタイリッシュ…という方向は違うだろうと感じていました。さまざまな視点から検討を重ねるなかで、笑顔を表現しながらも子どもっぽくならず、企業としての存在感をしっかり体現しているこの案に決めました。

平瀬さん(以下 平瀬):最後まで、フォントの選定やロゴマークとのバランスなど細かい部分まで丁寧に検討してくださり感謝しています。「光フードサービスらしさを追求する」という目標に向かい、回を重ねるごとに精度が上がっていくのを感じました。

井戸田:平瀬さんはデザインの良し悪しを単に好き嫌いで語るのではなく、「この表現だとこういう印象になってしまう」「光フードサービスとしてはこういう印象を目指したい」というように、フィードバックが非常に的確だったのが印象的でした。名刺をはじめ他のツールなどにロゴを展開する際にも、平瀬さんの意見にとても助けられています。

思いや言葉は、繰り返さなければ薄まってしまうから

井戸田:ロゴ、タグライン、ステートメントが完成したのち、社内発表会をお手伝いできたこともとてもうれしかったです。

大谷:新車発表のような演出をしたい、という僕の希望を具体化してくださりありがとうございます。みんなの期待感が高まるなか「じゃーん!これが新しいロゴです!」と発表する夢が叶いました(笑)

井戸田:そう言っていただけてうれしいです!企画を提案するにあたっては、ただ発表するだけでなく、「もっと笑顔になる」というタグラインを社員みんなで体験できる時間にしたいと考えました。

そうした思いから、まずはロゴ、タグライン、ステートメントを紹介する動画を作成。紙に印刷したものを個々人が読むのではなく、みんなでその時間を共有したいというねらいがありました。

平瀬:スマイルロゴのカード配布もLENSさんのアイデアですよね。集合写真の撮影も盛り上がりましたし、みんなで口元に当てて写真を撮り合う時間も素敵でした。

ロゴ、タグライン、ステートメントの発表会の様子

細田:「かわいい」とか「素敵だね」という声があちこちで聞かれて、予想以上にポジティブな雰囲気で驚きました。みんなが、これからの会社の未来にワクワクしてくれていることが伝わってきました。

大谷:しっかりと発表の場を設けたからこそ、「これは僕たちのロゴと言葉だ」と思ってもらえるスピードが速かったと思います。ただ、この勢いが失速しないよう、店舗で働くアルバイトの一人ひとりにまで浸透するためには、継続的な発信が必要です。

ウェブサイトや広報物への展開はもちろんですが、月に一度の全社ミーティング時には、発表会のときにつくってもらった動画を見てからスタートしています。思いや言葉というものは繰り返し目にして声に出さなければ薄まってしまうので、これからも続けていきたいと思います。

僕は創業時から上場を目指すと言っていましたし、その目標がまず達成できたのはとても感慨深いこと。ただやはり、これまでの光フードサービスは、大谷という個人商店の延長線上だったんですね。そうしたなか今回のプロジェクトでチームを立ち上げ、さまざまな視点、さまざまな立場から掘り下げてもらうことで、会社の主語が「I」から「We」に変わっていくような感覚がありました。これからもその感覚を大切に、「もっと笑顔。もっといい日。」を広げていきたいと思います。

井戸田:とてもうれしい感想をありがとうございます!これからも一緒に挑戦させていただきたいです。まずはこのプロジェクト成功を祝して、大黒に行きましょう!(笑)