柔らかく、革新的。
刷新した企業広告が
会社が変わる第一歩に。

今回のお客さまは、鉄鋼商社であるJFE商事株式会社。出会いのきっかけは、“JFE商事”を表現する、キービジュアル(アイキャッチ)制作の相談でした。
その後ご依頼をいただいたのは、業界紙に掲載する新聞広告。「JFEホールディングスの中で、JFE商事としての存在感を打ち出したい」「長年使用してきたビジュアルを刷新し、新しい企業イメージを構築したい」との課題をクリアすべく、コピーライティングとデザインの両方から、何度も検討を重ねました。
そうして完成した企業広告は、これまでの固い企業イメージを打破し、親しみやすさも表現しているとして社内外から高い評価を獲得。「広告のみに使用するのはもったいない」と、現在はJFE商事をあらわすタグラインとしてもご活用いただき、さまざまな広報媒体で活用されています。
「巡らせよう。鉄を、知恵を。」が生まれた背景とその後の展開について、JFE商事 広報室のみなさまと振り返ります。

広告用につくったコピーとビジュアルが、「会社の顔」に抜擢
井戸田:本日は、JFE商事さまの企業広告と動画について振り返っていきたいと思います。住吉室長は動画制作からのご参加でしたが、当時の印象は覚えていらっしゃいますか。
住吉さん(以下 住吉):私が広報室に異動する少し前に現在の企業広告を見かけ、ずいぶん柔らかな表現になったのだなとは思っていました。その時はまだ自分が関わるとは思ってもいませんでしたが(笑)
広報室に異動してすぐに「このイラストを動画にするプロジェクトが進んでいる」と聞き、当初の感想は「大丈夫かな」でした。というのも、20年以上この会社に身を置いてきた立場からすると、こんなにポップな表現が社内に受け入れられるだろうか…と不安でした。が、完成したものを見ると「いいな」と素直に思いましたね。社内からもポジティブな反応が多く、まさに、JFE商事の新しい未来につながる動画になったと思います。
井戸田:ありがとうございます。そう言っていただけて光栄です。篠崎さんはじめ、広報室のみなさんの熱意が高かったからこそ、ここまでのものを完成させられたと思っています。改めて振り返ると、最初にお会いしたときから、篠崎さんは「JFEホールディングス内において、自分たちの存在意義をしっかり表現したい」とおっしゃっていましたよね。
篠崎さま(以下 篠崎):商社というのは、具体的に何をしている会社なのかが見えづらい部分があります。JFEホールディングスの中にはJFEスチール、JFEエンジニアリング、持分法適用会社のジャパンマリンユナイテッド、そして私たちJFE商事があるのですが、まずはその中で「JFE商事としての存在感」をしっかり打ち出していきたいという思いがありました。

井戸田:最初、“JFE商事”を表現するキービジュアル作成のご依頼をいただいたことがお仕事をスタートするきっかけでした。その後、業界紙に掲載する企業広告を任せていただけることになり、とてもうれしかったです。
篠崎:新聞広告をご依頼する前にキービジュアルの制作をした時を振り返ったのですが、私たちがやりたいこと、入れ込みたいことばかりを伝えた結果、方向性がわかりづらくなったという反省がありました。
松本さま(以下 松本):部内でも「もっとLENSさんに自由に提案いただいたほうがよかったのでは」との意見が挙がり、そのためにもまずはJFE商事をさらに深く理解してもらうところから時間をかけさせてもらってもいいですかとお願いしたんですよね。

松井:あのプロセスは、私たちにとっても非常にありがたかったです。まずは会社の資料やグループ広報誌を提供していただき、徹底的に読み込みました。その上で、広報室のみなさんに開催していただいたワークショップや会社見学を通じて、JFE商事という企業像を自分たちなりに噛み砕いていきました。
特に意識して見ていたのは、篠崎さんがおっしゃっていた「商事としての存在感」です。JFEスチールでもJFEエンジニアリングでもない、JFE商事だからこそ言える言葉は何だろうと考え、出てきたキーワードが「循環」でした。JFE商事さんの事業は単に物を買って売るだけでなく、スクラップを含めた循環の仕組みを作り出している。そこに大きな価値があると感じたんです。
そこから、LENSコピーライターの古屋が「JFE商事さんにしか言えない言葉は何だろう」と考え抜いた結果、「巡らせよう」という言葉が生まれました。長らくJFE商事さんが掲げてきたサステナブル(持続可能性)にも通じますし、「巡らせる」という行為がJFE商事の当たり前になっていくという思いを込めています。


加えて、「巡らせよう」という言葉に、「知恵」を入れた点もポイントです。JFE商事は鉄鋼事業を知り尽くしている会社だからこそ、その知恵も世の中に循環させていくことが社会的意義である、とのメッセージになっています。
井戸田:当初は広告のコピーとして生まれた「巡らせよう。鉄を、知恵を。」ですが、現在はタグラインとしてご使用いただいており、とてもうれしいです。
篠崎:あくまでも新聞広告向けのコピーとしてつくったものだったのですが、社内での評判がかなりよくて、「このコピーを他でも使えないか」という話が自然と生まれていきました。
松本:私もこのコピーがあまりにも気に入ってしまって、新聞広告だけではもったいないと思っていたんです。そうしたなか社内の声が後押しとなり、改めてLENSさんに、タグラインとしても使用させてほしいとお願いさせていただきました。
松井:広告コピーが企業のタグラインとして採用されるケースはかなり稀なので、とても驚きました。でも、それだけJFE商事さんの中でこのコピーが響いたということなので、とてもうれしかったですね。コピーライターの古屋は制作時からずっと、広告コピーの枠を超えて、ずっと使い続けられるものを提案したい、と考えていたようです。
篠崎:さすが古屋さん!現在はPR品に入れたり取引先に配布するカレンダーに使ったりとさまざまな媒体で活用しており、名実ともにJFE商事をあらわす言葉になっています。

松本:今や、社内で「巡らせよう」というフレーズを知らない人はほとんどいないと思うくらい、自然と浸透していますね。
篠崎:それは、このコピーが本当にJFE商事の事業と価値観を捉えていたからこそだと思います。私たちの仕事の価値は、物を売り買いするだけではなく、さまざまな部署が連携して価値を生み出し、それが循環していくということ。なんとなくはイメージできていても言葉にはできていなかった自分たちの仕事を、「巡らせる」という言葉でその本質を表現してくれたと感謝しています。
イラストで表現したのは、世の中と、全ての部署がつながっていること
篠崎:イラストを使った柔らかなビジュアルもこれまでのJFE商事にはないテイストで、若手を中心にかなり好評です。LENSさんからは、写真案や抽象的なグラフィックなど他の方向性もご提案いただきましたが、既存の「固い会社」のイメージを変えられたら、との思いでイラスト案を選びました。
松井:実制作にあたり、異なるテイストのイラストレーターさんを3人提案させていただいたのですが、若手社員のみなさんにアンケートを取ってくださったんですよね。

松本:任意のアンケートだったのですが多くの社員が回答してくれて関心の高さを実感しましたし、ちゃんとしたものをつくらなければと気を引き締めました。
井戸田:イラストにはたくさんの要素が詰め込まれていますが、かなり細部にまでこだわりぬいたと聞きました。
松井:当初から、イラスト案になった場合は「JFE商事さんが生み出しているものがベルトコンベアに乗って流れていく」様子を表現したいと考えていました。「製品が出来上がった後はスクラップに分解され、また新しい素材になり、新しい製品になる」ことを視覚的に表したかったんですね。
描かれているものに関しては、本当に細かなところまでチェックいただきました。例えば、製品の形状については実際にJFE商事さんが扱っているものを正確に表現しましたし、コイルの形状ひとつ取っても、何度も修正を重ねています。
篠崎:このイラストですべての部署を表現したかったので、最初のラフ案に載っていた要素からかなりの数を追加してもらいました。全社員が身近に感じてほしいとの思いもありましたし、「一見、各部署はバラバラに見えるかもしれないけれど、実は全部つながっている」とのメッセージも込めています。
「イラストを動かしたい!」との思いから、動画制作がスタート
井戸田:動画制作は、篠崎さんから「あのイラストを動画にしたい」と相談いただいたのがきっかけでした。
篠崎:「巡らせよう。鉄を、知恵を。」をタグラインとして展開するなかで、動きのある表現を通じて「巡らせる」というコンセプトをより分かりやすく伝えられないかと考えるようになりました。アニメーションを使用した企業動画を制作するのは初めての取り組みだったので心配の声もありましたが、「ぜったいにいい動画になるはず!」と自信があったんですよね。
松井:動画の構成は、広告で使用しているイラストをベースに、アニメーションと実写を融合させる案を提案しました。動画制作会社にも入ってもらい、どの順番から始めるか、実写とどう絡めるか、現実的に撮影が可能な画角はどういったものかなど、撮影までにかなり多岐にわたる議論を交わした記憶があります。
松本:当初は「スクラップから始まって、それが製品になる」という流れだったのですが、議論する中で「スクラップがメイン事業のように見えるのでは」との意見が挙がり、「製品を作り、それが暮らしに生かされ、最後にスクラップに戻る」という流れになりました。
松井:見え方の工夫で言うと、「循環」というテーマを表現するために、常に画面がシームレスにつながるようになっています。例えばコイルの中に入っていった視点が、気がつくと別のシーンに出てくるような。これによって「巡らせる」というコンセプトが視覚的にも伝わることをねらっています。
井戸田:実写映像の撮影では、撮影場所の許可取りや出演してくださる社員さんの手配など、かなり大変だったと思います。
住吉:それが一番大変だったかもしれないです(笑)。
松本:本当は現場の様子をドローンで撮りたかったのですが、近くに空港があるため許可が下りなかったり。また、現場の操業を止めてもらわないといけない場面もあり、本当にさまざまな部署に協力いただきました。夏の撮影だったので、暑さも大変でしたね。
篠崎:7月に撮影したのですが、本当に暑かったです(笑)。あるシーンは川崎工場の屋外で撮影したのですが、特にカメラマンの高坂さんは汗びっしょりで、「大丈夫かな」と心配になるほどでした。
井戸田:社内の反応はいかがでしたか。
篠崎:とても反応がよく、特に若手からの評価が高かったですね。同期からは「かなり振り切っているけど、すごくおもしろいよ」という感想をもらいました。
住吉:意外だったのは上層部からの反応です。公開する前はネガティブな声が挙がるかもしれないと思っていたのですが、意外にも、好評の声が多くて。社長が役員会で「あの動画はとてもいい」と言ってくれたことがよかったのかもしれませんが(笑)。
篠崎:言葉やビジュアルに落とし込んでいただいたおかげで「JFE商事らしさ」が明確になったので、発信もしやすくなりましたね。
松本:動画の中で、ネジが「ポンッ」と生まれるところがとても可愛くてお気に入りです。細かなところまで手を抜かず表現してくれていて、すごく素敵な動画に仕上がったと思います。
住吉:このプロジェクトを通じて、若手の意見を取り入れることの重要性を再認識できました。このビジュアルはその象徴になっていると思います。
松井:そう評価いただけるものに仕上げることができて、とてもうれしいです。企業広告というのは商品広告や採用広告と違って、ターゲット設定が難しいのですが、JFE商事さんは当初から「ステークホルダー全体、特に若い世代に向けたものをつくりたい」という明確な方向性を持っていました。最後までブレずに完成できたのは、広報室のみなさんのおかげです。
篠崎:LENSさんには本当に感謝しています。最初は不安もありましたが、こんなに素晴らしいものができあがったのは、LENSさんが私たちの会社をしっかり理解してくださったからこそ。今後もぜひ一緒に新しいことに挑戦していきたいです。
松本:この先も、従来のJFE商事のイメージを覆すような提案を期待しています。今回のプロジェクトで得た経験を活かして、さらに進化していきたいですね。
住吉:長年続いてきた会社だからこそ、つい守りに入ってしまうものですが、「変化」が会社に与えるインパクトを目の当たりにできたプロジェクトでした。室長としてしっかり支えますので、今後も積極的に新しい試みにチャレンジしていければと思います。
井戸田:ビジュアルを生かしたノベルティ制作など、たくさん提案したいことがあるのでまたぜひ!これからもよろしくお願いします。
