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小学生向けイベント「こども夢の商店街」をご存知でしょうか。「お店を出す」「お客さんになる」「働く」など、さまざまな立場で参加できるこのイベントでは「おむすび通貨」と呼ばれるオリジナルのお金を稼いだりつかったりすることで社会の仕組みを学び、お金の大切さや働くことの喜びを体験できます。
2013年のスタート以来、今や全国各地で開催される人気イベントとなった「こども夢の商店街」。本イベントを手掛ける一般社団法人ユメ・フルサト代表理事の吉田大韋さんとLENS ASSOCIATES(以下 LENS)が出会ったのは、イベントが広がりを見せ始めた2016年ごろのことでした。
吉田さんが当時感じていた「活動の価値を伝えきれていないのでは」との課題を解決するため、まずはロゴデザインや提案書のデザインに着手。その後、チラシなどの販促物やイベントで使用するツールなど、数多くのアイテムを手掛けました。
今回6年ぶりとなるご依頼内容は、各種ツールを見直し、イベントの世界観を統一すること。ご依頼に至るまでの歩みと想いを聞きました。

「活動の本質をあらわしてくれている」と即決したロゴデザイン
原口:「こども夢の商店街」とLENSとの出会いは、吉田さんと矢野(LENS代表)の共通の知人から、吉田さんをご紹介いただいたのがきっかけでした。
吉田さん(以下 吉田):当時は、手探りで始めた「こども夢の商店街」の活動が少しずつ広がりを見せ始めていたころ。企業から協賛のお話もいただくようになり「やはりこの活動は世の中に求められている」と思う一方で、広報や販促物のデザインに課題を感じていました。当時は、知り合いのデザイナーに依頼したり内部でつくったりとその都度対応をしていたのですが、統一感がなく、テイストもバラバラで。世界観が定まっていないせいで、僕たちの活動の価値や可能性を十分に伝えきれていないと感じていました。デザインの統一をはじめ「見られ方」を意識することで、もっと信頼感のある、プロフェッショナルな印象を持っていただきたいという思いがあったんです。
ただ正直なところ、最初はLENSさんにお願いすることへの躊躇もありました。というのも、僕たちはボランティアから始めた小さな会社です。徐々に企業からご依頼をいただくようになったとはいえ、まだまだ規模は小さく、LENSさんにお願いできるような売上規模ではありませんでした。そうしたなか、矢野さんが僕たちをを応援したいと、社内の反対を押し切ってLENSの定価よりもかなりリーズナブルな費用を提示してくれ、なんとかお願いする決心がつきました。
原口:たしかに、営業利益を重視する役員からは反対意見もあったようですが、矢野いわく「社会的意義の高い活動だと感じ、ぜひ賛同の気持ちをあらわしたい」との思いで判断したと聞いています。
僕は制作前のヒアリングから参加させていただき、まずはロゴ制作からスタートしました。
吉田:実はもともとはチラシなどの販促物だけでもお願いできれば、という気持ちだったのですが、LENSさんから「チラシをつくる前に、『こども夢の商店街』の世界観を決めるためまずはロゴマークを制作させてほしい」と提案をいただいて。今思えば、その指摘は本当に的確でした。個々の販促物を整えるより先に、僕たちの活動のアイデンティティを形にする必要があった。いわば、すべての基盤となるブランディングの第一歩がロゴ制作だったと思います。
原口:そう言っていただけて安心しました。やはりロゴは商品やイベントの「顔」となるものなので、活動の幅を広げるためにもまずはロゴを決める必要があると考えました。
LENSでは、お客さまへロゴを提案する際に社内コンペを実施することが多いのですが、このときもその手法を取らせていただきました。


吉田:そのときのことは、今でも鮮明に覚えています。複数のデザイナーさんの案を出していただきましたが、原口さんの案を見た瞬間、「これだ!」と即決でした。僕たちが目指したい方向性と完全にマッチしている感覚がありましたね。
事前にお伝えしたのは、「子ども向けのイベントではあるものの、子どもっぽくはしたくない、洗練さも表現したい」ということ。原口さんの案は見事に条件をクリアしてくれていましたし、僕たちの活動の本質をあらわしてくれているデザインだと感じました。このロゴは今でも大切に使わせていただいており、むしろ年々その価値を実感しています。
原口:ありがとうございます。マークは、「夢の子ども商店街」の英字表記「Kid’s Dream Shopping Street」から、「K」と「D」を組み合わせて、2人の子どもが並んでお店に立っているような見え方にしたいと考えました。
頭文字をマークにするのはよくあるアイデアですが、Kだけだとちょっと寂しいなと感じたんです。もう一文字を加えることで、より楽しい雰囲気になりそうだと思い、同じパーツを使いながら、二つの文字で一つの世界観をあらわせるよう工夫を重ねました。
吉田:芸が細かい!本当にこのロゴ、めちゃくちゃ好きなんですよね。
原口:恐縮です(笑)。ロゴが決まってからは、提案書や販促ツールの制作をスタートしました。提案書から始まって、各種販促物、そして実際の会場で使用するPOPや案内板まで。すべてのツールを一貫した世界観で作り上げていく必要がありました。
吉田:膨大な量をつくっていただき本当にありがとうございました。特に印象に残っているのは、プレゼンに使用する提案書です。「こども夢の商店街」がどんな活動なのか、何を目指しているのか。それを視覚的に分かりやすく伝えるために制作していただきました。要所要所で改定はしていますが、今もあの提案書をベースとして活用させていただいています。
単にデザインをきれいにするということではなく、僕たちの活動の本質を理解した上で、それをカタチにしていただけた。それが、今も色褪せることなく使い続けられている理由なのだと思います。


ブランディングを、デザイナーの力のみで維持するのは難しい
吉田:それから約1年ほど本当に手厚くサポートしていただいたのですが、当時の僕たちの売上規模からすると、LENSさんへの適正なお支払いが難しい状況で…。かと言ってディスカウント価格のままお願いし続けるのも心苦しく、お互いに、一旦距離を置こうと判断しました。
原口:LENSも組織的にバタバタとしていた時期で、フォローが行き届かず申し訳なかったです。
吉田:とんでもないです。LENSさんと距離を置き、自力でがんばっていこうと決めたものの、それが予想以上に大変でした。LENSさんと一緒に作り上げた世界観は理想的だったのですが、それを維持していくのはとても難しくて…。買い取らせていただいたデータを活用し、都度フリーランスのデザイナーさんにお願いしたり、社内でデザインのできるスタッフに頼んだりしていたのですが、僕としては「なにか違うなあ…」と感じてしまうことも少なくありませんでした。
原口:販促物の切り口や方向性も、いろいろ試されたと聞きました。
吉田:試しましたね。例えば、もっとたくさんの子どもたちに響くようにと、アニメテイストのイラストを採用してみたこともありました。しかし一時的に参加者数は増えたものの、「お店屋さん※」に参加するクリエイティブな子どもの参加が減ってしまったんです。
その後もいろいろ試した結果、もとの世界観に戻そうと決めたものの、デザイナーさんに「これを参考につくって」と素材を渡すだけではなかなか思った通りにはならないんですよね。ブランディングって、デザイナーさんだけでなくディレクターの視点が重要なんだということを、身をもって経験しました。
※「お店屋さん」とは、自分のお店を出店する子どもたちのこと。子どもたちは、自分たちでお店のコンセプトを考え、商品を製作したり仕入れたりして、実際に店を運営する。

「想いを理解し、カタチにしてくれる」という信頼感
原口:そして今回。6年ぶりにお仕事のご依頼をいただけて、本当にうれしかったです。改めて、その理由をお聞かせいただいてもいいでしょうか。
吉田:今回LENSさんに再度お願いしようと思った理由は、まず根本的なところで、私たちの活動の本質を理解してくださっているという信頼感があったからです。
この数年間、いろいろなデザイナーの方にお願いしたり、社内で制作したりしてきました。でも、なかなか思うような結果が得られなかった。「子ども向け」って、簡単なようでいて実はとても難しいんですよね。
また、小学生の場合は保護者の承諾が必要となるので、保護者に「このイベントに自分の子どもを参加させたい」「安心して参加させられる」と思ってもらえる信頼感も求められます。私たちが目指しているのは、子どもたちに本格的な経験をしてもらうこと。子どもに媚びたデザインでは、「こども夢の商店街」の本質は伝わりません。
おかげさまで事業規模もどんどん大きくなってくるなかで、今ぶつかっているのが「世界観の統一」の壁です。最近は全国各地で同時にイベントを開催することも多いのですが、例えば、各会場が独自の判断でオリジナルツールをつくり、掲示していることがあるんですね。もちろんみんな「イベントがよりよいものになるように」「参加する子どもたちのために」と能動的に動いてくれているものの、レギュレーションがないから、どうしてもバラバラのテイストになってしまう。そうした現状があるなかで、今後「こども夢の商店街」をもっと強く魅力ある事業にするためには、再度世界観を整える必要があると強く感じるようになりました。そして、最初から私たちの想いを理解しカタチにしてくださったLENSさんと、もう一度一緒に取り組みたいと思ったんです。加えて、事業が成長し適正な対価をお支払いできる体制が整ったことも、再度お願いする決断の後押しになりました。
原口:仕事を離れてからも、小学生の子どもを持つ親として何度か「こども夢の商店街」に参加させていただいたので、今回お声がけいただいたときは非常に感慨深かったです。今回僕は監修としてかかわらせていただきつつ、メインデザイナーとして和田がメンバーに加わりました。
和田:まずは、イベントで使用するすべてのツールの標準フォーマット化を進めています。看板や配布物など、これまでは会場ごとに少しずつ異なる部分があったのですが、それらを全て統一したフォーマットにしていきたい。場所や時間などの可変要素だけを変更できる仕様にすることで、一貫した世界観を保ちながら、効率的な運用も実現できると考えています。

原口:ツールの種類が本当に多いので大変ではありますが、一つひとつしっかりとフォーマット化していくことで、今後の社内での運用もスムーズになると思います。
LENSも、以前お付き合いしていたころよりもお手伝いできることの幅が広がりました。まずは「こども夢の商店街」のブランディング強化に注力し、今後は、組織ブランディングなど事業のサポートもぜひお手伝いさせていただけたらうれしいです。
吉田:それは心強いですね。確かに、今後さらに組織が大きくなっていくなかで、組織としての方向性をしっかりと示していく必要があると感じています。社員はもちろんのこと、インターン生やボランティアスタッフを含めみんなで同じビジョンを共有しながら、もっと強い組織を目指していきたいですね。
「こども夢の商店街」は、子どもたちに本物の経験を提供する場であると同時に、僕たちが成長できる場でもあると思っています。LENSさんと改めてタッグを組めることで、新たなステージに進んでいけそうな予感がしています。引き続きよろしくお願いします!
