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訪問歯科診療ナカハマデンタル
未来に向かって、
「らしさ」をデザインする。
訪問歯科のトータルブランディング。
- CLIENT
- 訪問歯科診療 ナカハマデンタル
- PRODUCTS
- 企業ブランディング
BACKGROUND背景
ナカハマデンタル(三重県津市)は2020年2月に開業した、医院を持たない、訪問診療専門のデンタルクリニック。歯科医師と歯科衛生士が高齢や障がいなどの事情で通院できない患者さまを訪問して診療を行っている。訪問診療を兼任する歯科医院は多いが訪問専門の歯科は稀で、事業自体の認知度が低いのが課題となっていた。
STARTはじまり

ナカハマデンタルの前田代表は自らは医師ではなく、経営者として、コロナ自粛の中で自分たちの存在を広く知ってもらう方法を模索していた。以前からLENS代表である矢野のSNSをフォローしており、矢野とのブレスト企画に応募。2020年5月にオンラインでの対面が実現した。その際、矢野から「第一歩としてはプレスリリースが効果的では」「完璧な形でなくてもまずはスタートを切りましょう」という提案がなされ、実際にプレスリリースを行ったところ反響が大きく早速メディアに掲載。新規の診療依頼にもつながった。30分間のブレストで大きな成果を得られたことから、ナカハマデンタルのオフィス移転決定を機に、LENSにトータルブランティングが依頼された。
STORYストーリー

ブランドビジョンの共有
前田代表には前職で企業ブランディングに携わった経験があり、LENSには「自分にはない発想、提案」が期待された。形が見えにくい事業だけに、「らしさ」の可視化が一番の課題。その「らしさ」とは何か?「いかにも歯科医院、な感じにはしたくない」という要望を足掛かりに、時節柄、オンラインでミーティングを重ねてビジョンの共有が図られていった。 ナカハマデンタルの事業はビジネスとしては成立していた。ブランディングを行う理由は、歯科診療を、まだ届いていない人たちに届け、将来にわたって社会に貢献しつづけていくため。それには訪問歯科がほとんど知られていない現状を変え、歯科業界内での位置付けもメジャーにしなければ。必要なのは、新しく、ポジティブなイメージ醸成。 働く人がプライドを持てるように。患者さま・ケア担当者さまが気軽に声をかけられるように。地域の人に親しまれるように。「明るく、おしゃれに、親しみやすく」という方向性がプロジェクトチームで共有され、デザインに落とし込まれていった。 ゴール:クリニックの認知とイメージアップ 課 題:「訪問歯科」そのものが知られていない 制作物:オフィスデザイン/ロゴデザイン/ユニフォーム/車両デザイン/名刺/パンフレット 他
- ゴール
- クリニックの認知とイメージアップ
- 課 題
- 「訪問歯科」そのものが知られていない
- 制作物
- オフィスデザイン/ロゴデザイン/ユニフォーム/車両デザイン/名刺/パンフレット 他

オフィスデザイン
ブランディングは新オフィスの設計から始まった。「例えば、北欧風のカフェみたいな」。クライアントの言葉から、単なる好みではない本当の狙いを汲み取ってオフィスデザインをディレクション。その狙いとは、
①スタッフ(20〜30代の女性)が、職場を好きになれること。
②待機時間も、顧客を意識したふるまいが自然にできること。
③地域に気持ちよく受け入れられること。
「仮にカフェと間違えられたとしても、ナカハマデンタルを知ってもらう機会になるはず。医療施設とは思えない方向に振り切ろう」。クリエイティブディレクターから指示が出され、「歯科医院らしくない」オフィスが誕生した。ガラス張りで、変則的な形が印象に残るオープンな空間、広いテラス。開設後はキッチンカーを呼ぶなどして地域で話題になりつつある。

ロゴデザイン
オフィスと並行してロゴデザインを進行。360°方向で考えた後、膨大な数から10案ほどに絞ってオンラインでプレゼンし、わずか3日後には決定の連絡が。ほぼ直感で選ばれたというロゴは、やはり一見すると「歯科医院ぽくない」。評価の基準は「みんなよく笑うしよく動く、ナカハマデンタルのキャラクターにぴったり」であったこと。 デザインの発想は「ナカハマ=ナカマ+ハ」というコンセプトコピーから。「ハ」を歩く足に見立てて訪問歯科を表現し、カラーはナカハマデンタルが推奨する「スウェーデン式予防歯科」から、スウェーデン国旗の2色を採用。若手デザイナーのアイデアをアートディレクターがブラッシュアップしたもので、「かわいい」と「幼い」の違いに留意しつつ、あらゆるツールへの展開を想定して検証が重ねられた。

ユニフォーム(エプロン)
ナカハマデンタルでは開業時から医療用スクラブ(ユニフォーム)ではなく、ポロシャツなどを着用してきた。患者さまによってはスクラブを怖がってしまうためだ。 今回の意向は「エプロンで」。しかし既製品では速乾性や血液や水を弾く機能を持たせるのが難しく、ナカハマデンタルらしさも出ない。オリジナルエプロンの制作をLENSから提案し、つくるなら意味のあるものをと、あえてコストをかけることに。縫製作家やスタイリストを探し、生地の選定から試行錯誤した。ナイロン系の素材で一度サンプルを制作したもののしっくりこず、コットン系の生地に変更して厚みなどを検証。ポケットの位置や大きさ、リボン等の作りもLENSスタッフが繰り返し着用して検討し、おしゃれかつ実用的なデザインに着地させていった。 ユニフォームは、スタッフのモチベーションや外から見た印象を大きく左右する要素。オリジナルエプロンは内外から好評で「おしゃれで親しみやすい」という狙いを体現するものになった。

NEXT START新たなはじまり

オフィス、ロゴ、エプロン、訪問車両、名刺などの一式が揃い、新しい顔で歩き出したナカハマデンタル。歯科衛生士の求人では採用数の10倍の応募があり、関東圏からのエントリーも。高齢者施設からの依頼も増えた。「今後は、医療業界内でむしろ同業者を増やしたい。その上で、僕らは施設ではなく、困っている個人宅の患者さまの診療を担いたい」と、前田代表。なぜなら、事業としての伸び代がそこにあるから。最も届きにくい層に対して、いかに存在をアピールするか。ブランディングの次の課題だ。
レンズアソシエイツクリエイティブディレクター 矢野まさつぐ/
アートディレクター 原口宗大
ほぼリモートでのやり取りでしたが、プロジェクトマネージャー主導でミーティングの回数を増やし、却って関係を深められたと思います。LENSにとっても成長できる仕事になりました。

CREDIT
- Creative Director
- 矢野 まさつぐ
- Art Director
- 原口 宗大
- Project Manager
- 橘 春希
- Graphic Designer
- 澤田 星
- Copywriter
- 古屋 弥生
- Photographer
- 村山写真事務所
- Office Design
- 平山 智子
- Uniforms Design
- MAISONETTE inc.
COMMENTSコメント
訪問歯科診療 ナカハマデンタル
代表前田 伊織さま
ロゴデザインが一番意外でした。LENSさんのおかげでいい初動が切れて、感謝しています。この先、障がい者の就労施設で作ったお菓子などのブランディングにもチャレンジしたい。