デザインの力で
コミュニケーションが
自然と生まれる仕掛けづくりを

愛知県刈谷市に店舗を構えるNOBI COFFEE ROASTERS。古い理容室をリノベーションしたこの場所では、自家焙煎のスペシャリティコーヒー豆を販売しているほか、店内のカフェスペースにて定期的に地域の人やショップとのコラボイベントも開催しています。

2021年秋。NOBI COFFEE ROASTERSのオープンに先駆け、LENS ASSOCIATES(以下LENS)とともにブランディングプロジェクトがスタートしました。このプロジェクトを牽引したのは、当時入社1年目の合田(ごうだ)さん。目を引くパッケージや店の顔となるロゴはどのように誕生したのか。店主の久米さんと振り返ります。

左から、アートディレクター 三浦保高、NOBI COFFEE ROASTERS店主の久米伸明さん、グラフィックデザイナー 合田珠未令。

ロゴデザインで、「まち」「人」「コーヒー」が集まる場所、を表現

三浦:久米さんがLENSを知ってくれたきっかけは、矢野(LENS代表)と僕の奥さんが通ってる美容室のオーナーさんの紹介だったんですよね。

久米さん(以下 久米):そうなんです。その美容室には僕もお客さんとして通っていて、「お店のロゴとかパッケージをデザインしてくれる人を探しているんですよねー」と話したら「僕の知り合いにLENSっていう会社があるから一回聞いてみたら?」と紹介していただきました。家に帰って調べてみたら、事務所のビルは立派だし制作実績も大手企業ばっかりなので「うちなんて相手にしてもらえないんじゃ?」と思ったんですけど、まあ連絡してみるだけしてみようと思ってメールを送りました。

三浦:いやいやそんな偉そうな会社じゃないのでどなたでも大歓迎です(笑)。その後、改めて久米さんとお話させていただくなかでロゴやパッケージデザインをはじめとしたNOBI COFFEE ROASTERSのブランディングを手掛けることが決まり、当時の僕のチームが担当に。そのチームメンバーの一員が合田でした。

合田:そのとき私は入社半年くらいの時期で、ほぼ初めてちゃんと参加させていただく案件だったのでドキドキしながら打ち合わせに参加したのを覚えています。

久米:合田さんとはたしか、僕がLENSの事務所にお邪魔したときに初めて会いました。当時の合田さんは髪の毛がピンク色だったので「さすがオシャレなデザイン会社には派手な方がいらっしゃるなー」と。

三浦:ピンクの髪はあまり郊外にはいないから、たしかに目を引きますよね(笑)。

プロジェクトがスタートしてまずはロゴを提案させていただきましたが、そのときの印象って覚えていらっしゃいますか。

久米:似たパターンではなくて、いろんなバリエーションのロゴをたくさん提案してくださったのがうれしかったですね。資料をいただいてすぐ自分のなかでいちばんいいなと思うものは決まっていたんですけど、念のために周囲の友人知人に「どれがいいと思う?」とアンケートを取ってみたんです。アンケートでもいちばん人気だったので、自信を持って今のロゴに決めました。

ロゴ提案の資料。採用案からさらにブラッシュアップを重ね、決定までに20案以上のデザインを提案

合田:「『まち』『人』『コーヒー』が集まる場所にしたい」との久米さんの想いから「NOBI COFFEE ROASTERSをハブとして街が成長していく」のコンセプトを掲げ、広がった3本の線が集まって1本の線になり、また拡散していくイメージで制作しました。

また、ショップカードとポイントカードも、このロゴがあったからこそ提案できたデザインだと思っています。新たに金型をつくる必要があるため、一般的な名刺サイズのカードよりもコストがかかってしまうのですが、久米さんに「ぜひこっちのデザインで」と言っていただきとてもうれしかったです。

久米:ショップカードについても複数のデザイン提案をいただきましたが、一番目を引くという点に加えて、他のカードと明らかに形が違うので財布の中で見つけやすいという実用性も決め手でしたね。もちろんこちらも友人知人にアンケートを取りまして、期待通りいちばん人気でした(笑)。お会計の際、ショップカードを渡すときに「エヌの文字になっているんですよ」という会話も生まれますし、コミュニケーションツールとしても役立っています。

「N」の形のショップカード&ポイントカード。コーヒーや店内の土壁をイメージし、クラフト感のある紙をセレクトした

思わず集めたくなる、フリーハンド柄のカラフルなパッケージ

三浦:パッケージデザインは最初からカラフルなものをイメージされていたんですよね。

久米:コーヒーショップをオープンするにあたって、手当たり次第いろんなお店のパッケージを集めたんですが、色合いが鮮やかなほうがわかりやすくていいかなという漠然としたイメージはありました。コレクションしたくなる、という視点もひとつの要望として挙げていましたね。

合田:久米さんからのキーワードをもとに、ただ置いてあるだけでも目を引くことと、複数のパッケージを並べたときに統一感が感じられるデザインを意識しました。提案したのは、フリーハンドで幾何学模様っぽい柄を描いたパターン、ロゴをモチーフにしたパターン、カフェにあるアイテムをイラストに落とし込んだパターンの3つ。そのなかから、フリーハンドの案を採用していただきました。

「Lovely」「Romantic」など、それぞれのパッケージにつけられた商品名も合田さんが提案。取り扱い商品の変化も考慮し、抽象的なネーミングに

久米:ほかの案もカッコよかったんですが、フリーハンドの柄がいちばんぐっと来ました。自分のなかでは即決だったもののやっぱり念のためアンケートを取ったところ(笑)、ほぼ全員がこの案を推してくれましたね。

三浦:もともと5種類の予定だったんですが、久米さんが気に入ってくださったのでさらに7種類増やして12パターンを制作させていただきました。この柄のバランスや色の組み合わせはきっと僕からは出てこなくて、合田さんだからこそ実現できたデザインだなと思います。

久米:実際に店頭でもパッケージを褒めていただくことはとても多いですし、ギフト需要にも一役買ってくれています。お客さんから「別のお店で買ったコーヒー豆は使うたびに棚にしまっているけど、このパッケージはかわいいから出しっぱなしにしているんです」と声をかけられたことも。店頭に並んでいる豆は常時6種類前後なんですが、持っていないパッケージが並んでいたから買いましたと言ってくれるお客さんもいますよ。

合田:めちゃくちゃうれしいです!

要望を汲み取りつつ、さまざまな方向から幅広い提案をしてくれる

三浦:改めて、LENSとの取り組みを振り返ってみていかがでしょうか。

久米:こちらの要望を汲み取りつつ、さまざまな方向から幅広い提案をしてくださるのがありがたかったですね。なんとなく好きなイメージやこうしたいああしたいという要望はあるものの、実はそれがすべてではなかったりするし、見せてもらってはじめて「これも好きだな」に気づけることもありますし。

三浦:それはありますよね。久米さんのように多くの提案を楽しみにしてくださっているお客さんへはもちろんですが、はっきりと方向性を定めて依頼してくださるお客さんに対しても、違う切り口での提案を混ぜたりはしますねLENSは。

久米:僕の場合は提案いただいた案のなかからまずは自分が気に入ったものを決めて、それをもとにアンケートを取っていったんですが、周りにいる人たちと好きな雰囲気の方向性が一緒なんだなとわかったのもよかったです。

三浦:聞かれたみなさんもきっとうれしかったと思いますよ。オープン前のお店のロゴやパッケージデザインの決定に関われる機会ってそうそうないですし、一緒に決めたんだっていう気持ちがあると、なんだか仲間意識が芽生えますよね。合田さんにとっては初めての案件だったし思い入れも強いと思うけど、こうして振り返ってみてどう?

合田:お店がオープンしたとき、自分がデザインしたロゴがお店の壁に大きく描かれていたり、自分が手掛けたパッケージが並んでいるのを見てすごく感動しましたし、今日、お客さんからの反応をいろいろと聞けてとてもうれしかったです。当時入社1年目だったにもかかわらずこの案件に挑戦させていただけたことに感謝しています。

LENSは自社発信にも力を入れているんですが、もし可能ならNOBI COFFEE ROASTERSさんで撮影させていたけたらうれしいです。最近の取引先はBtoB企業が多いんですが、こういったBtoCの業態の実績も形に残せていけたらいいねと社内で話していて。

久米:ぜひぜひ。楽しみにしています。