クリエイティブの刷新と
自社発信の継続的な取り組みで、
社内外のファンを増やす。
今回STLONG pressにお迎えしたのは、自転車パーツ・関連部品の総合商社「リンエイ株式会社」(以下 リンエイ)の八代宗太郎さん。ベンチャー企業を経てリンエイに入社した八代さんはこれまでに、商品管理のシステム化や営業スタイルの転換などさまざまな社内改革に取り組んできました。
リンエイの歩みについて詳しくは八代さんと社長の対談をご覧ください▶RINZINE[第1回] 変革のDNA
LENS ASSOCIATES(レンズ アソシエイツ、以下 LENS)がリンエイのコーポレートブランディングを手掛け始めてから約3年。これまでの動きを改めて振り返るとともに、将来の展望についてもおうかがいしました。
パートナー企業には「自社にはない視点」を期待したい
井戸田:リンエイさんのプロジェクトが始まったのは私が入社する前なので、本日このような機会をいただけてとてもうれしいです。
最初の取り組みはムービーならびにコーポレートサイト制作と聞いていますが、プロジェクトがスタートするにあたって、リンエイさんからはどのような要望をいただいていたんでしょうか。
八代さん(以下 八代):いや…要望はまったく出していないですね(笑)
原口:そうなんですよ。当初からずっと「デザインはすべておまかせで」というオーダーで(笑)
八代:何も考えていない、というわけではないんですよ!LENSさんに対してだけでなく、パートナー企業には「自社にはない視点」を期待したい、と思っているんです。イノベーションを起こすには前提にとらわれないことが重要ですし、そのジャンルのプロフェッショナルに頼ることがいちばんの近道。LENSさんとのプロジェクトがスタートした際にも、担当者には「デザインに関しては口を挟まないこと」と強く伝えていました。
とはいえ、意味なく「LENSさんにまかせよう」と決めたわけではなく、最初の打ち合わせの会話のなかで、「カッコいいと思うモノ」「仕事に対する考え方」など、全体的な感覚がリンエイに合っている印象を受けたんですね。それで、まずはコーポレートサイトをお願いすることにしました。
従業員目線で考えると、デザインだったりクリエイティブだったり、意見を言いたくなる気持ちはわかるんです。「うちの会社らしさを考えるとこっちのほうがよくないですか」って。でも、既定路線のものをつくりたいなら外部のプロに助けてもらう必要はありません。結果的に、LENSさんには新しい「リンエイらしさ」を確立していただいたと思っています。
原口:信頼して「まかせます」と言っていただけるのは、つくり手からするとものすごくやる気をかき立てられます。反面、プレッシャーも大きいのですが(笑)
八代:当初は予定していなかったムービー制作も、LENSさんとの雑談のなかで決まりましたよね。
原口:コーポレートサイトの制作にあたって、「ファーストビューで何を見せるか」が課題のひとつではありました。「自転車パーツ・関連部品の総合商社」という事業内容をそのままイメージ写真で伝えるだけでは、リンエイさんが思い描いている未来像とは少し異なった見え方になってしまうのではないか…と。自転車パーツの取り扱いを通じて、一人ひとりの「自転車がある日常」を支えているんだ、というメッセージを発信したいと思ったときに、ムービーという見せ方が適していると思ったんです。
八代:ただ「カッコいい動画をつくりましょう」という提案ではなく、「なぜ動画での表現のほうが適しているのか」という理由を聞いて、すごく納得したのを覚えています。写真と動画の情報量の違いだとか、ファーストインプレッションが人に与える影響だとか。「動画をつくる価値」 をしっかり提示してくれたことに、真摯さというか「意味のあることを提案してくれる姿勢」を感じました。
時代の変化を先回りし、人に求められる企業として成長を続け、従業員に還元する
原口:コーポレートブランディングを手掛ける際には企業理念から一緒に考えさせてもらうことも多いんですが、リンエイさんはすでにしっかり考え抜かれている状態でしたのでヒントをつかみやすかったです。企業理念に対する八代さんの考えを聞いて、私たちもすごく勉強になりました。
井戸田:現在の企業理念はどのように確立されたんですか?
八代:入社したときから、必ずしも自転車にこだわり続ける必要はないと考えていました。これまでに培ったノウハウを生かすことができるならば、前例にとらわれずどんどん変えていってもいいのではと。とはいえ、長らく「自転車部品の会社」というアイデンティティを持ってリンエイが成長してきたのは事実です。だからこそ、事業構造そのものが変わるかもしれない未来を見据えたときに、会社の存在意義を「理念」として示すことが重要だと思いました。
企業理念を考えるにあたっては、「従業員が幸せか」「人に求められる存在でいられるか」「生き残っていけるか」の、3つのテーマを掲げました。「生き残っていけるか」については前者2つがあってこそだとは思うんですが、あえて3つ目のテーマとして独立させているのには理由があります。
入社後しばらくして社長と会社について数時間議論を交わす機会があったのですが、そのなかで行き着いた答えのひとつが「ダーウィンの進化論」でした。これまでにあらゆる生き物が誕生しては絶滅してきたけれど、時代の変化に対応できた者だけが生き残ってきた。それって、会社も同じではないかと。
一方で、今は「変化することが当たり前」の時代です。「世の中の変化に対応していきましょう」と掲げる企業、団体は数え切れません。だからわたしたちは、VISIONを決定する際に「先回り」という言葉を加えました。そうしてできたVISIONが「あらゆる時代の変化を先回りできる企業」です。
現代において、時代の変化に気づいてから行動していては遅すぎます。その理由は、かつて局所的に留まっていた情報の流れがIT技術の発展によって迅速かつ範囲が拡大していったように、社会に起きているあらゆる変化がどんどん加速しているから。生き残っていくために時代の変化を先回りし、人に求められる企業として成長を続けること。そして、そうした環境のなかで生まれる思考や経験は、従業員一人ひとりの人生を豊かにするはず。そうした思いを込めて、「VISION(めざす姿)」「MISSION(使命)」「ACTION(行動指針)」からなる企業理念を掲げました。
VISION(めざす姿):あらゆる時代の変化を先回りできる企業
MISSION(使命):常に先端の情報を取り入れ、危機感を持ち、対応力を持つことで、社会の課題に対応していく。
ACTION(行動指針):挑戦し、行動し、変化しつづける。
オープン社内報「RINZINE」を、未来の営業マンに育てたい
原口:コーポレートサイトを制作するなかでリンエイさんの考えや姿勢に数多く触れ、それらを社内の一部の人たちだけに留めておくのはとてももったいないと感じていました。企業ブランディングとして、また、採用ブランディングの一貫としても、社内外に広く発信したほうがいいとご提案させていただいたのが、オープン社内報の「RINZINE(リンジン)」です。
八代:かねてより、従来のどぶ板営業から発信型営業に変えていきたいと思っていたものの、「オープン社内報」という発想はありませんでした。LENSさんにご協力いただきながら更新を続けてきましたが、社外からの反響が予想以上に大きく驚いています。取引先から「RINZINE読みました。思っていた以上にすごい会社なんですね!」などポジティブな感想をいただけるのはうれしいですね。
また、採用活動においても自社発信の効果が目に見えてあらわれています。最近では、「RINZINE」を読んで会社の考えに共感した、興味を持ったから応募した、と言ってくれる方も少なくありません。現在、「RINZINE」はじめ広報活動については他部署の人間が兼任で担当していますが、もっと力を入れていくべき領域だと再認識できましたので、先日から広報担当者の募集をスタートしました。入社が決まった際には改めてまたいろいろ教えてください。
原口:それは心強いです。「RINZINE」のコンテンツ制作に携わって1年以上経ちますが、取材を重ねるたびに、従業員さんたちの姿勢も知らずしらずのうちに変化しているように感じます。リンエイさんが掲げる未来像に対して、それぞれがしっかりと個々の考えを持って取り組んでいる印象がありますね。
八代:「オープン社内報」とは銘打っていますが、社外からの評判を聞いていると、営業ツールとしてもじゅうぶんに活用できそうだと感じています。もっとコンテンツの量と幅を充実させ、将来的には「RINZINE」という媒体そのものが売上に貢献できるような取り組みを仕掛けていきたいです。
販売店とその先のお客さまに喜んでもらい、存在価値を高める
井戸田:八代さんが今後LENSに期待していることはなんでしょうか。
八代:三者へ伝えるにはどうしたらいいか、斬新な発信方法をどんどん提案してほしいですね!一緒に取り組んでみて改めて、LENSさんの強みは「思いをカタチにすること」「相手に伝えること」だと実感していますので、ブランディングのブラッシュアップを継続しながら、ともに新しいことに挑戦していけたらうれしいです。
原口:リンエイさんの変化スピードが早すぎるので、置いていかれないようにがんばらないといけないなといつも反省しています…(苦笑)。
最近の大きなニュースは「自転車部品のNo. 1ディストリビューター宣言」ですね。現在1万品目ある取扱商品数を、5年後にはその4倍、4万品目にまで増やすと聞いたときは本当に驚きました。
【参考記事】RINZINE[第7回] 自転車部品のNo.1ディストリビューター宣言!
八代:増やすだけではなく、それらすべてを自社在庫として管理することがポイントです。日本では自転車ユーザーの増加とは反対に自転車販売店は減少の一途をたどっており、また、店舗面積も小さくなっている現状があります。これからますます、ユーザーが求めるパーツのすべてを販売店の在庫で抱えるのは難しくなるでしょう。リンエイではこれまで「販売店からのオーダーに即座に供給する体制」を整えており、その強みは全国の販売店に支持されています。けれどリンエイで取り扱っていない商品もあり、その場合は当然ですが、取り扱っている他社さんに発注してもらうしかありません。
「即座に供給できる」というリンエイの強みに「日本一の商品点数」という強みを加えることで、自転車市場において確固たるポジションを築くことが「自転車部品のNo. 1ディストリビューター宣言」のねらい。4万点ともなると、なかにはものすごくマニアックなパーツもあります。でも、「メジャーなパーツもマニアックなパーツもリンエイに言えば一度にそろう」となれば販売店にとってもラクですし、その先にいる自転車ユーザーにも喜んでいただけます。
「自転車部品のNo. 1ディストリビューター宣言」に伴って、今後は紙カタログのあり方や見せ方、動線なども見直していかなくてはと思っていますので、引き続きLENSさんのお力を貸してください。また、コロナ禍でストップしてしまっていた自転車コミュニティの活動も復活させたいですし、YouTubeでの発信にも興味があります。やりたいことがたくさんありすぎますね(笑)
原口:そういうのはきっと井戸田が得意なんでぜひ協力させてください。
井戸田:得意です!すぐにでもやりたいです(笑)
八代:本当ですか。でもまずは急いでこっちの体制を整えないといけないな…(笑)
原口:普段はどうしても報告がメインになってしまいますが、本日はさまざまなお話を聞けてうれしかったです。もっと提案していいんだ!ということがわかったので(笑)、これまで以上にこまめにコミュニケーションの機会を設けさせてください。
八代:ぜひぜひ。よろしくお願いします。
井戸田:わたしはさっそく、再来週のRINZINE取材に同行させていただこうと思います!本日はありがとうございました。