見た目を整える、が本質ではない。
事業を深く理解したブランディングで
なりたい未来を具現化する。

医師や歯科衛生士が施設や個人宅にうかがってケアをする「訪問歯科診療」を専門に手掛けているナカハマデンタルさま。リブランディングを機に、オフィス内装、タグライン、ロゴ、ユニフォーム、パンフレット、ウェブサイトなど、幅広いプロジェクトを担当させていただきました。

アートディレクターとしてあらゆるプロジェクトを牽引してきた澤田と、ブランディングパートナーの橘が三重県津市にあるオフィスにお邪魔し、これまでの取り組みについて詳しくうかがいました。

各制作物の詳細については下記の記事でも詳しく解説していますのでぜひご覧ください。https://note.com/lens_associates/n/nc60cc36e0110

(左から)ブランディングパートナー  橘 春希、ナカハマデンタル代表 マエダイオリさま、ナカハマデンタル院長 中浜彩さま、アートディレクター 澤田星

オフィス移転を機に、リブランディングプロジェクトを依頼

橘:マエダさんと最初にお会いしたのは2020年の5月ごろ。当時LENSが開催していた無料のオンライン相談※がきっかけでした。(※現在は終了)

マエダさま(以下 マエダ):もともとLENSのインスタをフォローしていて、無料相談の投稿が目に留まったので申し込みました。具体的な相談でなくても大丈夫とのことだったのでちょっとお話してみたいなと。

橘:当時はコロナ禍でさまざまなことが制限されている状況でしたが、ナカハマデンタルさんは開業されたばかりだったんですよね。

マエダ:まさにコロナ自粛が広まりつつあった2020年2月に開業し、4月には緊急事態宣言が発令されました。契約が決まっていた施設やご自宅への訪問もできないしどうしようかと思ったときに、せっかく時間があるならと、自宅でできる口腔ケアや歯にまつわる豆知識などを詰め込んだフリーペーパーをつくることに。フリーペーパーといっても、手書きの原稿をコピー機で印刷してホチキスで留めるという手作り感満載のものなんですが(笑)。それを、施設やご自宅に配ってまわっていました。

LENSさんとのオンライン相談のなかで、矢野さん(※LENS代表)から「フリーペーパーのことをプレスリリースとして発信してみたら」とアドバイスをもらい、おすすめされた書籍を読んで実際にプレスリリースを書いてみたところ、すぐにいろんなメディアから取材依頼をいただき驚きました。開業したばかりだったためメディア露出によって認知度が向上したことがまずありがたかったですし、紹介されたメディアを見た方からの問い合わせや申込みも多くて。フリーペーパーを実際に愛読してくださってる人たちの声も聞くことができ、スタッフのモチベーションにもつながりました。

当時はアパートの一室を事務所にしていたのですが、近くのカフェが空き物件になることを知り移転を決意。これからのナカハマデンタルを体現できるような、オシャレなオフィスにしたいと考えました。LENSさんが内装を手掛けているかはわからなかったけど、ロゴやパンフレット、ユニフォームなどトータルでお願いしたかったので「LENSさんならなんとかしてくれそう」と思い、改めて相談をさせていただきました。

澤田:ナカハマデンタルをブランディング化していこうというプランは当初から立てていらっしゃったんですか?

マエダ:ブランディング、というほど確固たるイメージがあったわけではないのですが、打ち出し方の工夫は必要だろうなとは思っていました。というのも、訪問歯科ってまだまだ認知度が低いんですよね。一般的な歯科クリニックが訪問歯科“も”手掛けるというケースは増えつつありますが、訪問歯科“のみ”をおこなうクリニックはまだ多くありません。顧客開拓はもちろんですが、採用面でも、これまでの歯科クリニックとの違いをアピールすることが不可欠だろうと考えていました。世の中には歯科専門のコンサル・デザイン会社がたくさんあるんですが、あえて「歯医者っぽくない」オフィスやユニフォームにしたくて、LENSさんに依頼しました。

橘:当初、彩先生はマエダさんの話を聞いていかがでしたか。

中浜さま(以下 中浜):なるほど、医療業界じゃない人から見るとそういう切り口があるんだなと思いましたね。自分も知らず知らずのうちに歯科業界の常識が普通だと思っていたようで、最初は「本当にそんなことやれるんだろうか」とは思いましたが、「たしかにダサいよりおしゃれなほうがいいしなあ」と思いましたし、きっと彼にまかせれば大丈夫だろうなと。

マエダ:長年訪問歯科で経験を積んできた彼女の話を聞いたり、自分なりに分析したりするなかで、「訪問歯科特化型クリニック」は非常に工夫のしがいがある事業だと感じたんですね。一般的な歯科医院だと立地がものすごく重要ですが、訪問歯科に特化していればその必要はありません。また、完全予約制なのでスタッフの働きやすさも担保できますし、だからこそ質の高いスタッフを確保できる。歯科業界からは今も「そんなビジネスモデルでうまくいってるの」と聞かれることもあるんですけど、逆に業界外の人からは「なんで今までなかったんだろうね」と驚かれることが多いですね。

「ブランディングにものすごくお金をかけている」って思われがちなんですけど、費用として比べたときには、実は一般的な歯科医院に比べてかなりリーズナブルなんです。建物やデンタルチェア(治療用の椅子)といった設備費もかかりませんし、完全予約制だから効率よくシフトを組むことができ、継続的な広告費も必要もありません。なのでそのぶんしっかりとブランディングに力を入れ、将来につなげていけたらと思っています。

タグラインを見て、「この名前でいこう」と自信が持てた

橘:改めてマエダさんからご相談いただいてから、オフィスの内装、タグライン、ユニフォーム、パンフレット制作と、あらゆるプロジェクトが一斉にスタートしました。

マエダ:ユニフォームとパンフレットは当初から依頼するつもりでいたものの、タグラインの必要性についてはあまりピンと来ていなかったのですが、提案されたものを見て「すごいな」と思ったのを覚えています。

中浜:中浜という名字の中に「仲間」と「歯」が入っているなんてぜんぜん気づいていなかったので、「こんな視点があるなんて!」と驚きましたし、人との関わりが好きな雰囲気が表現されていてすごくいいなと思いました。

マエダ:「中浜」は彼女の旧姓で、独立するときにいったん屋号として「ナカハマデンタル」を掲げたものの、本当にこの屋号でいいのかな…なんてことも思っていたんです。でも、このタグラインを提案していただいたことで「この名前でいこう」と自信を持てたきっかけになりました。

予防歯科の先進国として知られるスウェーデンを参考にしていることから、オフィスは「北欧風カフェ」をテーマにデザイン

オリジナルキャラクターへの展開を見越したロゴを提案

澤田:LENSでは社内コンペを経て勝ち残った案をクライアントに提案する流れが多いのですが、ナカハマデンタルさんのロゴは初めて採用された案なのでとても思い入れがあります。先輩たちからも「めっちゃ悔しいわー」と言ってもらえて(笑)、それを機にナカハマデンタルさんの主担当を任されることになりました。

靴を「ハ(歯)」にも見えるバランスで組み合わせ、軽快さを演出する黄色のステップを加えることで、ナカハマデンタル様の頭文字「N」を表現

マエダ:2人とも即決だったと思います。そこから派生してキャラクターのご提案をいただいて。

澤田:実はもともと、キャラクターをつくりたいという野望があってこのロゴを提案したんです(笑)

マエダ:最初は「キャラクターいるかな?」と思っていたんですけど、結果的につくってよかったです。広報物やSNSに使用したりノベルティをつくったりと今やナカハマデンタルのアイコンとしてしっかり機能していますし、ちょっと宣伝めいた告知をしたいときにもキャラクターを添えると宣伝っぽさが軽減される気がしています。

ナカハマデンタルのキャラクター「サンちゃん」。実は当初別の名前を提案していたものの、顔になっている歯ブラシの部分が数字の「三」に見えることからスタッフ間で「サンちゃん」の通称が定着し、そのまま正式名に

当時の提案書類。ナカハマデンタルらしさを表現するさまざまなキャラクターを考案

橘:ユニフォームをエプロンにしようというのはもともとイメージされていたんですか?

マエダ:そうですね。採用活動の一環としてかっこいいユニフォームが欲しいなと思っていて、エプロンがいいんじゃないかなとは考えていました。

中浜:そのころは行く先々でエプロンが目について仕方がなかったですね。出張先や旅先でいろんなカフェに入ってはエプロンをチェックしていました。気になったときはお店の方に直接「そのエプロンってオリジナルですか?」と声を掛けて情報を集めたり(笑)

澤田:カフェっぽい感じとかガーデニングっぽい感じとか、エプロンといってもいろんなジャンルのデザインがあるんですよね。実際に使うシーンを想像しながら生地の質感や重さ、ディティールを詰めていきました。

マエダ:生地や色はけっこう試行錯誤しましたよね。実際に出来上がったサンプルを見ながら改善点をすり合わせて現在のかたちに落ち着きました。

中浜:ほかにはない、いいユニフォームになったと思います。「胸ポケットはペンが何本くらい入る大きさがいいか」「腰のポケットはスマホが入るサイズがいい」「しゃがんだときに邪魔にならない丈はどのくらいだろう」とか、細かな要望もしっかり拾っていただいて。使い勝手やデザイン性はもちろん、洗濯でシワにならない点も気に入っています。

ポケットの位置・大きさや肩紐の色味など、細かなディティールにまでこだわりぬいたユニフォーム

ウェブサイトや写真撮影も澤田がディレクション
丁寧なやり取りを経てデザインが決定した訪問車は、今やナカハマデンタルの顔とも言える存在に

ブランディングの成功が、選択や行動の一貫性につながっている

橘:どういったシーンでブランディングの効果を感じられることが多いですか。

マエダ:まずは採用面ですね。実はいま、東京からは歯科医師が、群馬からは歯科衛生士が通ってくれているんです。知ってくれた入口としては、求人一覧に並ぶ写真のなかでいちばん目立っていた、という理由かもしれないけれど、想定してなかったエリアのドクターたちにも「まず知ってもらえる」というのはブランディングの力があってこそだと思いますし、距離的負担、心理的負担を超えてここで働きたいと思ってくれたのは単純にうれしいです。

また、ナカハマデンタルでは立ち上げ当初より予防歯科の先進国であるスウェーデンを意識していたのですが、ブランディングによってその世界観が強化され、以前よりさらに北欧の文化に意識が向くようになりました。例えば予防歯科だけでなく、週休3日制や長期休暇の取得など、より働きやすい環境の整備にも力を入れています。ブランディングによって自社への愛着が増した実感がありますし、選択や行動の一貫性も増したように思います。

そしてそれは、LENSさんという外部ブレーンがいるからこそ実現できていること。僕が経営の中心に立ってはいるけれども、そのときの状況や心境でブレが出てきてしまうこともあるので、都度ナカハマデンタルがめざすべき視点に戻していただけるというのはものすごく価値があると思っています。LENSさんとのやり取りを通じて、デザインとは見た目を整えるだけでなく本質的な説得力が必要なのだと学びました。

澤田:そう評価いただけてとてもうれしいです。今後LENSに期待したいことってなんでしょうか。

マエダ:これからもいろんなことを忌憚なく相談させていただけたらうれしいですね。僕としては、ナカハマデンタルをもっと大きくしようとか増やそうというよりは、このビジネスモデルをもっと多くの人に知ってもらいたいと思っていて、このビジネスモデルで挑戦したい人のブランディングをLENSさんに手伝っていただけるような流れがつくれたらおもしろいかもしれません。

ありがたいことに、うちを参考にして事業を始めたいと相談を受けることも増えてきたのですが、ブランディングの重要性を伝えるのは難しいなと実感しています。「なんとなくおしゃれなロゴをつくって車をラッピングすることが本質じゃないんだよ」と言ってもなかなか理解してもらえなくて。LENSさんが入ってくれたらそのあたりをしっかり理解してくれるんじゃないかなと思っています。

橘:実は澤田は歯科医院のクライアントが多く、業界の知識も豊富なのでいつでも任せられると思います(笑)

澤田:プレッシャーですね(笑)ぜひたくさん紹介してください、楽しみにしています!